第148章 其々 ※
兵舎に戻った私は、やっぱり体の疲れを感じていた。………おかしいな、暫く調子が良かったのだけど……若干ふらつく足取りで自室に向かっていると、なんの前触れもなく体がふわ、と浮いた。
「えっ、うわっ……!」
戸惑ったけれど、顔を見なくてもわかる。
この過保護さと遠慮のなさ。
前から人目を憚らないところはあったけれど、最近はより顕著な気がする。
………私の残り時間を惜しんでくれているのかな。
「……リヴァイ兵士長……。」
「……ふらついてんじゃねぇか。」
「あ、ちょっと……王都からの帰路で疲れただけです。」
「休め。」
「は、い……。すみません……。」
リヴァイ兵士長は私を自室に送り届けてベッドに寝かせると、側の椅子に腰かけた。
これは……私が寝るまで、ベッドから抜け出さないか見張る構えだ……。
「……あの。」
「なんだ。」
「1人で大丈夫です。」
「……どうだか。」
「……信用ないですね……。」
「無理はしないと、どの口が言う?お前は目を離すとすぐいなくなるか、傷を負うか、死にそうになる。」
あまりに並べた言葉が辛辣で、どんな問題児なんだ私はと思うと、ふっと笑いが込み上げる。
「その度に守ってくれちゃうから調子に乗るんですよ……。ほっとけばいいのに。」
「うるせぇ、ほっとけるわけねぇだろうが。寝ろ。」
即答するその言葉にまた、小さく喜びながら――――
寝たふりをして、早くこの多忙な兵士長を解放してあげなくちゃと、目を閉じる。
すると、胸の上でとんとんと、彼の手が鼓動を模したリズムを打つから―――――
私は寝たふりをしたかったのに、すぐに夢の中に誘われていった。