第148章 其々 ※
「――――ナナさん、わ、私……っ……、相談が、あって……!」
「ど、どうしたのエミリー。」
お母様の診療所に向かうと、エミリーがあたふたとしながら私に相談を持ち掛けてきた。紅茶を置いて席に着くと、エミリーは顔を赤くしながらその相談を切り出した。
「あ、あの………私なんかに務まらないかもしれないのは、重々承知の上、なのですが……!」
「うん?」
「――――ロイ君の、研究所を………手伝いたいん、です………。」
耳まで真っ赤に染めて、肩をすくめて俯くエミリーが可愛くて、ふっと愛しいという気持ちが沸き起こる。
こんなにも私の弟を、好きでいてくれる人がいるなんて。
「本当に?私個人としてはエミリーがロイの側にいてくれたら心強いし、嬉しい。」
「ほ、本当ですか……。」
「うん。ロイに話してみようか、私から。」
「良いのですか……?でも……もしかしたら、ロイ君が嫌がる、かも……しれませんが……。」
「――――気難しい子だからね。それもないとは言えないけど……。でも言わずに諦めるのは悔しいじゃない!ね?」
「――――はい!!」
まっすぐでひたむきで――――……とても一生懸命で可愛い。
彼女はきっと、ロイに追いつきたくて、同じ物を見たくて、理解したくて――――調査兵団を辞して看護師の道を目指した。
エミリーのその純粋な温かさは、愛情は……きっといつかロイに届くはずだ。