第148章 其々 ※
診察の帰りに、ロイを尋ねる。
決して広くない研究所も、彼一人には広すぎると思った。
「――――研究者は少しは、集まった?」
「いや……なかなか。そりゃ黒い噂が立ってるからね。関わりたいと思うような人は珍しいでしょ。まぁ、以前にもここに居てくれた助手の数名が、やりたいと連絡をくれてるから……僕はそれでも十分だと思ってる。」
「――――そっか。」
「――――以前よりも顔色が良くないね。進行してるんでしょ。」
「そりゃするよ。調査兵団にいても、病院のベッドで眠っていても、まったく進行しないわけじゃないもん。」
「――――屁理屈だ。」
ロイは私に小さな袋を手渡した。
「――――薬。以前のものと変えた。単発で飲むものより、毎日飲み続けるもののほうが体への負担が少ないから。ちゃんと飲んで。毎日。分かった?」
「―――――………うん。」
ロイの言葉を聞いて、それを受け取ることを一瞬ためらう。
けれど、私はまた心の内を整理して、ちゃんと、ロイに向かって笑みを向けた。
「………ありがとう。」
「………1週間ごとに診察に来るなら、その度に寄ってよ。用意しておくから。」
「わかった。………ふふ………。」
「??なんだよ。」
「――――一週間ごとにロイを尋ねる口実ができて、嬉しい。」
笑顔を見せる私のことを、一瞬戸惑った顔でロイは見つめて―――――、目を逸らした。
「――――………馬鹿。」
「あ、ひどい。」
離れていても、今度は絶対に見逃さない。
1週間に1回、ちゃんとロイと向き合って――――心が乱れたり……辛いことがないかちゃんと本心に寄り添いたい。
随分成長したと思えどまだ幼く不安定なところがある、可愛い弟。
最愛の弟に心配をかけすぎているのも分かってる。
だから……今度こそ、辛い思いはさせないんだと、小さく誓った。