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【進撃の巨人】片翼のきみと

第148章 其々 ※




――――――――――――――――――――

ロイはあれから数日後、用意された研究施設に移るために兵団本部を後にした。結局多くは話せないまま………私がここに残ることに、苦い顔をしながら。

疫病に関する研究は、旧体制が作った研究施設をそのまま使うことになり、新しくロイと共に疫病と闘う研究者の募集も始まった。――――過去、旧体制の謀により優秀な研究者が不自然に事故に遭ってこの世を去った事実はなんとなく医師たちの狭い世界では噂で囁かれていて、この研究所に組みしたいという希望者は多くはない。

ロイは『一人の方が気が楽でいいけど』と薄く笑うけれど、彼は一人でいてはいけない。どうしたものか……けれど私が、と言うわけにもいかない。ウォール・マリアの奪還を目前に、私は絶対にその瞬間に立ち会わなければならないから。



「――――劇的進行と言うほどでもないが、進行はしている。身体を酷使するようなことはしてないだろうな?」

「……してないです。ちゃんと気を遣ってますよ。」



定期的な診察で、ボルツマンさんに釘を刺される。



「――――そう言えば、症例によるところの話で……ちょうど山間部の村出身の兵士がいて、色々聞いてみたんですが。」

「ほう?」

「狩猟を生業としていると、私たちが普段食べないようなものは食べていたそうです。」

「普段食べないようなもの?」

「動物の――――肉ではなく、内臓とか。」

「内臓?!?!」



ボルツマンさんは嫌悪感をありありとその表情に表し、いつもよりもさらに眉間の皺を深く刻んだ。



「ふふ、そんな顔しなくても。意外に美味しいらしいですよ?それに……私達だって、内臓の一部を使った料理を食べてるじゃないですか。ソーセージとか……だから一緒ですよ。ちょっと食べてみたいです。」

「――――信じられん。」

「またその子にもう少し聞いてみます。王都の症例は……データによると貴族だから……何不自由ない環境だったとしたらヒントを探すのは難しいですからね。」

「ああ、そうしろ。」



何でもない会話をしつつ、血液を採取する時に注射器を刺したその傷から、まだ血が出ていることを少し怖いと思った。



――――大量に出血したとしたら、健康な人よりも血が止まらず、失われ続ける。



まず助からない。



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