第148章 其々 ※
「――――ナナ、今日の実験はどうだった?」
エルヴィンの部屋で濡れた髪をタオルで乾かしながら窓の外を眺めて歌を口ずさんでいると、私のすぐ側に……ベッドを小さく軋ませてエルヴィンが座った。
私の手からタオルを取ると、エルヴィンは左手で器用に優しく髪を拭いてくれる。
「うんとね……硬質化はおおよその形状までエレンの思うとおりに出来るみたい。頭でイメージしたように作れるんだって。」
「ほう、それはすごい。」
「だからね、ハンジさんが自動で巨人を倒せる装置を作ろうって今目を輝かしてる。」
「なるほど。ウォール・マリア奪還に赴くにも、早い段階でうろつく巨人を淘汰しておけるのはいい。期待しているとハンジに伝えよう。」
エルヴィンがふわふわのタオルを私の頭にかけて、私を見て柔く笑む。
「なに……?なんか変?私。」
「―――――可愛いなと思って。」
「………っ、何を、今更……!」
「仕方ないだろう、毎日思うんだから。」
「……あの、あっ、そうだ…こないだもハンジさんがね、根を詰めすぎてひどい顔色だったの。」
「そうか。」
エルヴィンは自分の膝にタオルをひいてからそこをぽんぽんと叩いて、“ここにおいで”と誘うように優しい目を向ける。
私はなんだか恥ずかしくて、でも嬉しくて……誘われるがまま、エルヴィンの膝に頭を預けて仰向けに寝た。
―――――見上げる蒼は、どこまでも穏やかで綺麗だ。
ハンジさんが言っていた『エルヴィンが幸せそうだ』というのは、この表情のことかもしれないと思うと、私も見つけられたことが嬉しい。
「だからね、期待を伝えるのはいいけど、あんまり根を詰めないように――――……って、聞いてる?」
「いや、全く聞いてなかった。」
「もう!」
わかりやすく拳を振り上げて、怒っているとアピールしてみる。けれどその手すら優しく大きな手に包まれてしまった。