第13章 戦友
私は背を向けた奇行種の、反対の足の腱を狙って切りつけたが、私の力では機動力を削ぐほどのダメージを与えられなかった。
続いて背中にアンカーを刺し、その背を駆けあがる。
それに気付いた奇行種は、私を捕らえようと手を振り回す。
捕まったら終わりだ。
私はガスをふかして、その手をかわす。
その間に、ロキ班長は愛馬に跨り、再びもう片足の腱を切ろうと後ろに回り込んだ。
「アルル、捕まるなよ!」
「はいっ………!」
ロキ班長が再び奇行種の片足の腱を切る。
がくん、と奇行種が膝をついた。
が、斬撃を与えたロキ班長を、奇行種は蹴り飛ばした。
「うぐっ!!!!!」
数メートル吹き飛んだロキ班長を、苛立ったような表情で睨む奇行種。
食ってやる、そう言わんばかりに近づこうとする。
駄目だ、急がないと………!
私は再びガスをふかして最速で項に到達した。
「ロキ班長!!!!逃げてください!!!!!」
私は思い切り叫び、力の限りその項を削いだ。
吹き出す血液に似た体液の向こうに、ロキ班長の無事を確認できた。
やった―――――――――――――
「アルル!!!!!!!!!」
確かに、仕留めた。
だけど――――――――
私の頭上から、巨人の掌が落ちてきた。
息絶えるその瞬間、自分を倒した人間を道連れにしようとでも言うかのように。
あぁ、ここまで頑張ったのにな。本当に、私はいつもいつもツメが甘い。
「………お母さ――――――――――――――」