第147章 同憂
「――――ナナ、病気のことでなにか進展はあった?」
「……進展というほどではないのですが……、ここ数日は本当にとても調子が良くて、自分でも驚いています。……何が要因なのかはわからないのですが。あと……興味深い症例のデータがあって……。」
私はハンジさんに、山間部の村で起きた症例だけがとても進行が遅く不思議だという話をした。
「ふうん……何だろうね……。発症者の年齢や性別は?」
「どれもバラバラでした。ですが、全体的に見ると、若いほど進行が速い印象です。」
血液を正常に作れない、というのは言うなれば、“正常じゃない血液は作れてしまう”ということだ。血液を作る力の強い若年層の方が進行が速いのは頷ける。
「……山間部の村のその患者さんだけが特例なわけじゃないと仮定するなら、何か特別な理由があるはずで……それが分かればなにか手掛かりになるかなぁと思っているんです。」
「なるほどね……。最近ナナが調子が良い理由に当てはあるの?」
「そうですね……以前よりは食事ができるようになったことと――――………。」
私はふふ、と小さく笑って俯いた。
「――――皆さんの側にいられること、です。嬉しくて、幸せで――――……心も体も喜んでる。そんな感じがします。」
「――――エルヴィンにもたくさん愛されてるしね?」
「!!」
ハンジさんの意地悪な目線とその一言に、のぼせそうになるほど顔が真っ赤になった。
「いや別に覗いてたり聞き耳立ててるわけじゃないよ?ただね、エルヴィンを見てるとわかるんだ。――――ナナが彼を満たしている時は、とても――――エルヴィンは落ち着いていて、幸せそうだから。」