第147章 同憂
「―――イザベルも、地下街でボロボロの状態で転がってた。」
「……そう、だったのですか……。」
「まだ一人で生きて行けもしねぇのに、世の中に一人で放り出されるガキが……この世界には多すぎる。」
「……………。」
私が王都で不自由なく過ごしているその間、彼はその目で、どんな過酷な世界を見て来たのだろう。私はただ、その黒い瞳を見つめてその過去の回想に耳を傾けた。
「運よく拾って貰えればいいが――――、そのほとんどが、男なら奴隷に成り下がり、女ならもっとクソだ……体を売って身を削って生きることになる。――――そんなガキは、少ないに越したことはない。」
「………はい。」
ケニーさんがいなければ、そもそもリヴァイさんも……今こうしてここにいなかったかもしれない。
そしてリヴァイさんがいなければ、イザベルさんも――――外の大きな空をその目に映すことなく、倒れていたかもしれない。
「――――リヴァイさんは子どもと子猫には特に優しいんですね。」
「――――お前のせいだろうな。こうなったのは。」
「………まさか。持って生まれたものですよ。お母様からの遺伝かもしれないです。」
「――――………どうだろうな。」
どうだろうな、と言いつつもその手は私を撫でて――――、その目は優しく細められた。
もしも己惚れて良くて……
私の中の多くをあなたも形作っているように、あなたを形作るものに私が関われているとしたら―――――
私の生きた意味はそれだけでも十分あったんじゃないかとすら、思う。