第147章 同憂
エルヴィン団長がピクシス司令のところに行かれてから、リヴァイ兵士長の元を訪れる。
「手が空いたので、なんでも仰ってください。お手伝いします。」
「ああ……。」
リヴァイ兵士長の手元の資料を見ると、地下街での孤児の数の年々の推移や衛生面・学習面・子供が働いている数の推移などが書かれている。
壁外調査以外のことで、リヴァイ兵士長が政治に関わることで提言されるのは珍しい。
そうか……ケニーさんのことも、彼の心を動かすひとつのきっかけになっているのかな。机で書き物をしているその側でリヴァイ兵士長の書いたものを除き込んだ。
「………すてきですね。」
「…………そうか。」
「手伝いたいです。……まだ集計していないものがあれば、まとめますよ。」
「じゃあ……これを頼む。」
「はい!」
狭い部屋で2人、言葉を交わすことなく黙々と資料と向き合う。この時間が……まるで兵士長補佐のあの頃に戻ったみたいで、心地いい。
一時間ほど経ったところで、リヴァイ兵士長から声がかかった。
「休憩にするか。」
「……はい、紅茶を淹れますね。」
笑顔で答えると、ふっとリヴァイ兵士長を纏う空気が優しいものに変わる。そして私の顔をまじまじと見て、安心したように言葉をくれた。
「――――思ったより顔色がいい。調子は悪くないのか。」
「はい!やっぱり……私の心は、調査兵団にいたいみたいです。」
「だからと言って気を抜くなよ。」
「ふふ、はい。」
香しい香りが立つカップを二つ並べてテーブルに置く。
私は自室から持って来た、リヴァイさんにもらったクッキーを持参した。リヴァイさんは食べないかもしれないけど……でも、ありがとうももう一度ちゃんと、伝えたかったから。