第147章 同憂
「さてナナ、明日の会議に孤児院の設立の議題が上がっていてね。リヴァイが概要等を今まとめてる。貰ってきてくれるか?」
「はい。」
「俺はこれからピクシス司令と約束がある。しばらく戻らないから、リヴァイに何か頼まれるようなら、手伝ってやってくれ。なにも無ければ、しばらく自由にしてていい。ロイやエレンと、話すこともあるだろう。」
「はい!!」
リヴァイへのお使いを頼むと、なんでもない仕事よりも数倍嬉しそうに引き受ける。――――妬けるな、まったく。
あぁそれと……ロイのことは少し、話しておくべきか。
「―――ナナ。」
「はい?」
「――――さっき、ロイが来てね。」
「………何か、失礼なこと――――……。」
「いや。ただ……君が治療を受けずにここにいることを納得できないそうだ。」
「…………。」
ナナはやっぱり、と昏い顔を俯かせた。
「俺もナナの意志を尊重すると伝えた。できるなら俺はロイの味方でいてやりたかったが、こうなっては仕方なかった……。もしかしたら、何か―――……強行手段に出ないといいんだが。――――思い当たる節はないか?」
「………ない、です。」
「―――本当に?」
ナナが目を合わせずに、言葉を詰まらせたのも気になった。俺の再度の追及に、ナナは一瞬ぴく、と反応したのを俺は見逃さない。
「―――ないですよ。ロイのこと、信じるって決めているんです。」
「―――そうか。」
ナナは口角を僅かに引き上げて薄く笑みを湛えて、俺を見つめた。意志は固いんだな。
「―――いつもロイのことまで気にかけてくれて、ありがとう……。」
「――――君が教えてくれたんだ。」
「……え?」
「君が俺の両親を自分の家族のように大切にしてくれるから。学んだんだ。愛する君が愛する人は、俺も大切にしたいと思うようになった。君の、おかげだ。」
俺の言葉にナナは驚いた顔をしてから―――――嬉しそうに目を細めて、笑った。