第147章 同憂
「ナナと話せたか?」
「――――はい……。」
「君は納得いかないんだろう、ナナがこうしてここにいることが。」
「――――当たり前でしょう……!」
ロイはいつになく怒りを込めた目で俺を睨んだ。
「僕はあなたなら姉さんを守ってくれると思ったから――――……!」
不自然にその先を、ぐ、とロイは噤んだ。
やはり何かあるな。
ずっと小さく抱いていた違和感の輪郭が濃くなる。
「―――思ったから、何をした?君は。」
「―――ッ……何も、してない……!……僕はただ……姉さんに死んで欲しくない……!」
ロイは一瞬目を泳がせてから拳をぐっと握って、やり場のない想いを込めて自身の膝をどん、と打った。
「ナナが生きていればいいのか?」
「……もちろん、そうでしょう?義兄さんも……!」
「――――俺は……感情もなくベッドに人形のように繋がれて泣くナナを見るくらいなら、思う存分好きなように――――望む生き方と死に方を叶えてやりたい。」
「…………!」
ロイは目を見開いて、言葉に詰まった。
「俺の愛し方と、君の愛し方は違うようだ。」
「………だって……死は、別れだ……死んだら、もう、会えない……。」
「そうとは限らないぞ?」
「………え………?」
一瞬目を伏せてから――――ほんの少しの狂気を滲ませるように、ロイの目を見る。
「――――ナナが望むなら、俺も共に逝く。」
「…………!」
――――その逆も然りだとは、言わない。
またこじれるだけだ。
それに――――こんな事を言ってはいるが、ナナは俺が共に死ぬことを望まない。それよりももっと酷な―――――、ナナを失ってもなおこの世界の真実を追求して、外の世界を知れと―――――そう言うんだ。
ナナのいない世界で生きることが俺にとってどれだけの苦行かも、彼女は想像もしないのだろう。