第146章 食欲 ※
エルヴィンとの交わりは、全く体に負担になることもなく……むしろよく眠れて、気分がいい。
エルヴィンが招集に応じて発ってから、私はこれからのこと、病気のこと……ボルツマンさんが見せてくれたあの資料から手がかりはないか、を再び考えた。
――――ロイにも、この病気のことを聞いてみようと思う。
「あ……、そう言えば………。」
あの子はまさに、山間部の村出身なんじゃなかったっけ。
いつも食べ物を求めて徘徊してる―――――……
「サシャ。」
「はっ、はい?!あっ、ナナさん!?」
サシャを探してようやく彼女を見つけたその場所は、食糧庫だ。案の定私の姿を見て、その背中に何かを隠した。
「わ、私めになんの御用でございましょう?!」
「お、落ち着いて……別になにもしないよ……。」
あからさまに目が泳いで、汗が吹き出している。
「――――でもとりあえず食料は置こうか……?」
「――――………。」
悲愴な顔をして、サシャは後ろ手に隠したパンをそっと置いた。
「パン……好きなの?お腹空いてるの?」
「は、はい!いや、でもあの……どちらかと言えば肉が好きですね!!!あとお腹は減ってます、常に!!」
「そっか……、でも兵団の食糧庫から盗むのはいけないよね。ちょっとおいで。」
「ひっ!!」
サシャを自室まで連れて行こうとすると、異常に怯える。
「だからなにもしないよ……。ふふ、今まで散々叱られたの?」
「え、あ……はい……。」
「お腹がすくのは良い事だよ?誰にも突き出したりしないからさ、おいで。私の部屋に少しなら、お菓子がある。」
「お菓子?!?!」
怯えていた様子が一転して、子犬のように目をキラキラさせてついて来る。――――なんだろう、エレンたちとはまた違う可愛さがある子だな。
自室に招き入れて、椅子に座らせると、食べ物を探しているのか、辺りをきょろきょろと見回して落ち着かない素振りを見せる。