第146章 食欲 ※
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――――狭いベッドで、私をぎゅっと抱きしめて眠っているエルヴィンの顔を、腕の中から見上げる。本当に左腕だけでもなんの支障もなく、何度もイかされてしまった……。
エルヴィンの様子が少しだけ変だったことに、気付かないふりをする。
いつもの余裕たっぷりな加虐性じゃなく――――……何か不安がある、何かに抗っているんだろう、ほんの少し眉間に皺を寄せて、私を攻め立てた。
人類の未来を左右する舵を切る立場だ。重責は今までの比じゃないだろう。そして……何の心配もなく私が支えられたらいいのに、私のことでも心労をかけてる。本当に申し訳なくて、心が痛む。足を引っ張りたいわけじゃないのに、いつもいつも私は誰かの枷になる。
――――そんな弱気な思考を追い払うように、エルヴィンの胸にむぎゅ、とすり寄る。
「もうすぐ、行けるかな……。エレンの実家の、地下室に………。」
全てではなくても、そこに私とエルヴィンの………いや、ワーナーさんとエルヴィンのお父様、そしてアルミンのおじいさまの求めた何かがきっとある。
その真実に辿り着くために、ここまで仲間の死を越えてやってきた。
色んな人を傷付けて、ここまで来た。
〝外の世界〟
それが、煌めいて美しくて平和なものじゃない可能性は覚悟もしてる。けれど知らなくてはならない。それが私とエルヴィンが共に抱く〝生きる意味〟だから。
いつか海を越えて―――――、この空が続く、ワーナーさんが指さして教えてくれた遥か彼方の異国の地を見に行く。
そこには、リヴァイさんもいて。
ハンジさんも……エレンも、ミカサもアルミンも。
大切なみんながいて――――、初めて見る異文化に驚きつつも目を輝かせる。
………そんな甘っちょろい空想を諦めきれずに頭の中に描きながら、愛しい人の腕の中で、また眠りについた。