第146章 食欲 ※
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「――――ぁぁあっ………。」
ナナの細く白い体が、狭いベッドの上で弓なりに反る。
以前よりも明らかに筋肉が落ちて細くなった体は、少しの力を込めれば折れてしまいそうだ。
その小さな体に、凶暴な自分を埋めることを少し躊躇った。
だがナナが―――――俺に両手を伸ばす。
来て、とねだる。
――――胸が苦しい。
ナナを思えば身体に負担をかけるに決まっているセックスなどすべきでなく、諭してその身体を慈しんで抱き締めて眠るのが正しいのだろう。
それなのに抗えない。
ナナが生きている実感を、俺のものだという実感を、激しく求めてしまう。
「――――は……っ……ナナ……ッ………!」
「――――あっ、は、ぁうっ……ん……っ……!」
ナナの中は変わらず溶けそうに熱くて、もっと奥まで突き入りたいという願望が際限なく芽生える。腰を掴んで引き寄せたくても、左腕一本ではなかなか思うようにうまくいかず、もどかしい快感が頭を支配する。
もっと、もっと深く交わりたい。
もどかしさと興奮により、獣のような呼吸を繰り返す自分は―――――大人の男の見栄もなにもない愚かさだ。
身体を貫かれる衝撃に耐えながら、ナナが涙目で俺を見上げて――――、また両腕を伸ばす。
俺を求めるように、俺を受け入れるように。
「――――エルヴィ、ン………きもち、いい……?」
「――――ああ……。」
「私も……きもち、いい………。」
「――――本当か……?辛いんじゃないのか……?」
「……辛くないよ……?エルヴィンのほうが、辛そう………。」
ナナの指が、随分皺をよせていたのだろう俺の眉間をつん、とつついて悪戯に笑った。