第146章 食欲 ※
「進行が極めて遅かったのは、王都居住者……?かと思えば、そうでもないんですね……山間部の村の患者さん……か……。地下街の症例は………驚異的スピードで悪化してる………。」
「個人差によるものなのかもしれんがな。山間部の村の例を除けばよくある傾向だ。そもそもの環境の衛生度や食事による栄養の摂取量が王都から離れれば離れるほど、平均して悪くなって当たり前だからな。特に――――地下街は圧倒的に環境面も栄養面も悪い。」
「………だとしたら山間部の村の患者さんも、地下街の次くらいに悪い結果でもおかしくないですよね……。何かヒントがあるかも………。」
「――――仮に栄養面が影響するとして、調査兵団でそれほど良い食事が出てるとも思えんし……普通に進行してもおかしくないと思うが。」
「ひどい。兵舎の食事は美味しいですよ。」
「美味いか美味くないかじゃないだろ。あくまで基準は栄養だ。」
「……たしかに、一時期食事が出来なくなった時に―――――初めて倒れたのと、体の異変を感じた、かなぁ……。でも確実にとは言えないな……。」
うーん、と首を傾げて考える。
「調子が良かった時の栄養摂取面も思い出せ。何か好んで食べていたものがこの病に効く、なんてこともあり得る。」
「――――それが山間部の村でよく食べられているものと合致すれば、可能性は高まりますね。ちょっと思い出してみます……。」
「そうしろ。手当たり次第に薬を出してみてもいいが……良くない方向に働くものがないとは言えんからな。ある程度当たりを付けてからの処方がいいだろう。」
「そうですね。……いつもありがとうございます。」
とてもとても親身に考えてくれるボルツマンさんに、改めて深く頭を下げた。
「――――礼には及ばん。せいぜい身体を労われ。」
「はい。」