第145章 慈愛
「おいフロック、誰――――……。」
上段のベッドで本を読んでいたのか、本をバサッと置いて、もう一人見た事の無い人が顔を出した。
黒髪で――――おかっぱ頭に、正義感がとても強そうな強い眼差しをしている。私はその人に目を向けて、会釈した。
「――――マルロさん、ですか?初めまして。調査兵団団長補佐のナナです。」
「えっ!!」
マルロさんは急にシャキッと姿勢を正して、バタバタと急いでベッドから降りて来た。
「マルロ・フロイデンベルクです!!ど、どうぞ宜しくお願い致します!!」
びっくりするほどの大きな声で心臓を捧げる敬礼をした彼に、私は思わず笑ってしまった。
「……ふふ、はい、こちらこそ宜しくお願いします。」
「あ、あの……団長補佐……のナナさんは………噂だと、リヴァイ兵長の恋人だと……!」
「…………!」
「えっ?!」
フロックさんがなぜか声を上げたけれど……やっぱり噂になってた……。仕方ない、厩舎でリヴァイさんが私を抱き締めた時に、何人か若手の兵士が通りかかっていたから……。
なんて言おうか、と困った顔をしている間にも、マルロさんは興奮気味にリヴァイ兵士長のことを話し出した。
「俺、リヴァイ兵長のこと――――尊敬してます、それに……調査兵団は俺の求める正義を貫いた組織だ……!逆境にも、汚い力にも屈せず……だから俺は調査兵団に編入を希望しているんです!!」
「……そうなのですか……。それは嬉しいです。――――私も、自由の翼に誇りを持っています。ではこれからは――――共に、戦いましょう!」
「――――はい!!」
マルロさんは色んな話をしてくれた。
リヴァイ班が追われて森に潜伏していた時に接触して――――、中央憲兵に潜り込んで情報を得る手助けをしてくれたそうだ。
相変わらず、敵対している兵士までも惹きつける魅力は――――健在なんだと、嬉しくなる。
そこへ、部屋の奥から不機嫌な声が飛んできた。