第144章 恋着
「―――エルヴィンにまた、我慢、させちゃうから……。」
「――――よく分かってるじゃないか。」
「それに今日は、ちょっと……ごめんなさい………。」
頭を垂れて、申し訳ないと言う。
それは体調のことか、それともリヴァイ絡みで後ろめたい何かがあるのか。
――――本当ならこのまま押し倒して、泣いても拒んでも、今まで君を欲した分すべてぶつけて抱き潰したい。
――――でも、無理はさせられない。
俺が強いれば、ナナは身を削って応えてしまう。
「――――いい。その代わり、抱き締めてくれるか?」
「…………!」
「俺は腕が足りない。何度でも抱き締めてくれるんだろう?」
「――――喜んで。」
ベッドで身体を起こしたナナが、両手を広げて俺を迎え入れる。壊さないように、その細い身体を抱き締めて、その胸に縋るように頭を預ける。
「――――エルヴィン、ひとまず……お疲れさま……。」
「まだ、ここからが本番だ。」
「――――うん。でも……こうして抱き合える時間すら、なかったから……。今私は、嬉しい………。」
「ああ、そうだな………。」
ナナを見上げると、真っ赤な目をこちらに向けている。たまらずその頬に触れたくなる。
――――治療法がない病を患っている?
俺のナナが。
共に生きると―――――、外の世界を一緒に夢見たナナが。
もう、壁外調査に出ることもない。
俺と共に、その空を見上げて共に駆けることもないのか?