第144章 恋着
しばらくして、ナナは目を覚ました。
銀糸の睫毛を上げてうっすらと目を開け、俺を認識した途端大きく充血した目を見開いた。
それはまるで白兎のようだな、と思った。
白銀のふわふわとした髪に―――――泣いたのであろう、充血した大きな瞳。――――リヴァイが纏う空気が張っていたからな。ナナをどうやっても病院に帰したかったのだろう。それと向き合うために小さくリヴァイを呼び止めたナナに気付いてはいたが――――、彼女が自分でどうにかしようとしていた。だから俺は何も言わずに部屋を去った。
リヴァイがナナを抱えて来たということは、一度は話が決裂したものの、ナナがまためげずにリヴァイを説得したんだろう。
リヴァイの様子も、どこか柔らかかった。
「――――あれ、なんで……私……?」
ナナがきょろきょろとあたりを見回す。
「眠った君を届けて、リヴァイは自室に戻った。」
「そう………。ごめんなさい……。」
しゅん、と肩をすくめて縮こまる。
「――――もう遅い。深夜までの執務はさせない約束だ。それに――――、眠ってしまうくらい、体力を消耗している状態は心配だ。ハンジから聞いたが、ハンジの部屋に泊めてもらうか?それとも――――ここで眠っても、構わないが。」
「―――ハンジさんの、ところで泊めてもらう……。」
ナナは少し気まずそうに、俯いて言った。
――――少しの意地悪をしたくなる。
「なぜ?」
俺の問にナナはぴく、と反応した。
頬を染めて俺を見上げる。