第144章 恋着
「――――奇跡を信じたいと思ったのも、初めてだ。」
「…………?」
――――奇跡的に、治ればいいのに。
そんな夢のような事を考える自分を笑いながらナナの頬に左手を添えると、俺の手に簡単に収まる小さな顔をすり、とすり寄せてくる。
あまりに愛おしくて、最たる独占欲を纏った言葉をかけた。
「――――ナナ。もし病を克服する術が本当に無いなら―――――、悪いが君を地獄まで連れて行く。俺の腕の中で、息絶えろ。」
ナナは一瞬目を丸くして、嬉しそうに笑った。
「――――嬉しい………。」
キスをするために閉じたナナの瞼から零れた一筋の涙も、君の残りの命も。
―――――全て俺のものだ。
渡さない、誰にも。