第144章 恋着
「――――大丈夫か。」
「………大丈夫です。」
「―――……息が、荒い。」
ナナの下唇をそっと親指でなぞると、ナナは目線を上に逃がして頬を染めた。
「―――それは……リヴァイさんが私を抱き締めてるからです……。」
「―――興奮してんのか?」
「……ちが……っ、……わ、ないです………。」
腕の中から逃れたいと、これ以上はマズいと言わんばかりに身体を捩る。が、急にハッとしたようにまた俺の目を真っすぐに覗き込んだ。
「――――必要としてくれますか。」
「………あ?」
「――――心が揺らぐことが、あったでしょう……?」
――――ケニーの事を言っているのか。こいつのことだ。情報共有の場で提供されたその情報の断片と俺の様子から察したんだろう。
「………俺を育ててくれた元殺人鬼は、叔父だった。そして――――死んだ。それだけだ。」
「…………。」
ナナは目を開いたまま、きゅ、と眉間に皺を寄せた。
「……なんだその顔。」
「……内容が濃すぎて、今……頭の中を整理してます。」
「…………。」
しばらく一点を見つめて何やら考えていたナナが、また俺のほうに目線を上げて目を合わせてくる。
「―――やっぱり全然理解が追いつかないのですが……それは、聴いては駄目な話ですか……?」
「………面白くもねぇ話だ。俺の――――過去のことなんて。」
「聞きたいです……。」
「…………座れ。」
こいつは言い出したら聞かねぇからな。
はぁ、とため息をつきながらナナをベッドに座らせた。――――いくらベッドしか座る場所がねぇからと言って………簡単に男の部屋でベッドに座るところが、危なっかしすぎるだろ。