第143章 我儘
“兵士長”として兵を率いていない時のリヴァイさんは過保護すぎるほど私を守ろうと、死なせないようにしようとする。
――――きっと、ビクターさんに襲われた時や……リンファを亡くしたあの壁外調査の時のように、私を切り捨てる判断もできてしまうから、その反動なんだと思う。
その判断は何も間違っていないのに。
私がそれを望んで、ちゃんと兵士長として応えてくれた結果なのに。
――――それに耐えきれない、兵士長ではないただのリヴァイさんが――――、あの頃の『守るべき存在』であるナナを守ろうと、時折顔を出すんだろう。
今でこそ彼の生きる意味は、調査兵団の仲間を守り、更には人類を守り平和な生活を齎すことに大きく変化していっているけれど………彼が生まれて初めて見つけた生きる意味が―――――”地下街に降りて来た一人の少女を守ること“だから。
意を決して、リヴァイさんの部屋を訪ねる。
また怒らせるだけかもしれない。呆れられて、見放されるかもしれない。それでもちゃんと……『ごめんなさい』だけじゃなくちゃんと、話したい。
ノックに対して、冷たい声で入室が許可された。
扉を開けると、調査兵団の兵舎の私室よりも随分狭くて、ベッドと小さなテーブルセットだけがあるその部屋の椅子に腰かけたまま、不機嫌そうな目線がこちらに向けられた。
「………なんだ。」
「あの、もう少しちゃんと話したくて。」
「………話すことなど何もない。」
「私はあります……!」
「……俺の言うことは聞かねぇくせに、自分の話だけは聞けと?」
「――――………!」
いつになく怒ってる。いや違う……傷ついてる………。
「――――そうです。あなたが言ったんです、強欲で我儘なままでいていいって。」
「――――………。」
リヴァイさんはフイッと窓の方へ顔を向けて、目を合わせてはくれない。でも私は、心の内を話した。