第143章 我儘
「――――落ち着いた?」
「……はい……。ごめんなさい……。」
「謝らなくていいんだよ。私もずっとナナと話したかったから。」
ハンジさんが自室で紅茶を淹れてくれた。
カップに口を付けながら謝ると、ハンジさんはまた柔らかな笑顔を向けてくれて――――、心が少し、楽になる。
「――――本当はね、私も……本心はリヴァイと同じだ。」
「………え………。」
「ナナには、なんとしてもその難病を治して欲しい。だから例えしばらく離れ離れでも……王都の病院で治療を受けた方がいいのかなって。」
「…………。」
「――――でもね、ナナの生きる意味も知ってるから。」
ハンジさんは困った、というように眉間を寄せて、悩む素振りを見せた。
「エレンの硬質化によるウォール・マリアの穴を塞ぐと言う作戦が現実味を帯びて来た以上、シガンシナ区のエレンの実家に眠る―――、巨人の謎に辿り着けるところまであとわずかなこの状況で………1人病院のベッドで待て。なんて言っちゃうのは、ナナ自身が見つけた生きる意味をないがしろにしてしまうみたいで……それも違うよなって。なんとか思いとどまってる。」
シリアスにではなく、はは、と小さく笑ってくれるところが、ハンジさんの優しい気遣いだとわかる。
「――――結局は自分の気持ちだからね。行動も―――――、生きた意味も、死ぬ意味も。結局は自分で決めて、見つけて、生きるしかないんだ。」
「――――はい……。」
「――――ただ、ナナを守ることが“生きる意味”の根幹だったリヴァイにとっては――――、ナナを苦しいほど愛してるリヴァイにとっては、――――ひどく辛いだろうね。」
「――――………。」