第143章 我儘
一通りの話を終えて、各々の部屋に戻る。
ご丁寧に幹部には自室が用意されている。革命を起こすまでは犯罪者だが、成功した途端俺達は功労者だ。
そうだ、戦とはそういうものだ。
――――勝った奴が語ったことが真実に、正義になる。
ナナと目を合わせないまま部屋に戻ろうとすると、ナナが遠慮がちに俺を呼び止めた。エルヴィンもハンジも気付いていたが、気を利かせてか――――、先に部屋を後にした。
「―――なんだ。」
「あ、あの……ごめんなさい……。」
「謝るくらいなら言うことを聞きやがれ。――――どうせ聞かねぇだろうが。なら謝るな。――――お前の意志は、よく分かった。」
突き放すように言ったからか、ナナはぐっと何か辛いものを押し込むように怯んだ。が、勇気を振り絞るようにして俺を見上げた。
「――――あなたの傷に寄り添いたいから、ここにいます………。」
「――――必要ない。」
「――――……嘘です、だってさっき―――――……。」
「情けない顔をしていた、とでも言いたいのか?」
「違います!ただ――――……。」
「――――お前がここに残って病が進行してぶっ倒れた時……、死ぬその時は、俺の腕の中か?それともエルヴィンの腕の中か?」
「――――………!」
「――――エルヴィンの腕の中だろう。そうお前が望んだんだろう。」
「――――そう、です………。」
「――――なら行け。俺に構うな。あいつに繋がれてろ。――――それがお前の幸せだ。」
ナナはただその大きな瞳を見開いて、捨てられた子猫のように呆然と俺を見つめて――――、自分を納得させるようにか、涙を零さないようにするためか、潤んだその目を泳がせてから……その目を伏せた。