第143章 我儘
「――――だって、それで治療法が見つからなければ?」
「…………。」
「一人、ベッドの中で死ぬなんて許さないと言ったのは、エルヴィン団長ですよ。」
「おいナナ、それとこれとは――――……。」
黙っていたリヴァイ兵士長が口を開いた。
「――――病は気からって、言うでしょう?」
私はふふ、と笑って見せる。
「私の心は、調査兵団にあるんです。だから……そこから引き剥がされた身体が、どんな治療を受けてもどんな薬を飲んでも……元気になんて、きっとならないって確信してるんです。私は、ここにいたい。迷惑にならないよう十分気をつけます。」
「駄目だ、気が散る。」
「…………。」
「…………。」
即答で却下するリヴァイ兵士長に対し、ハンジさんとエルヴィン団長は俯いて黙ったままだ。
「――――お願いです、リヴァイ兵士長……。」
「駄目だ。病院へ戻れ。そして治療に専念しろ。治療方法が無くても足掻け。」
「…………。」
リヴァイ兵士長は目を合わさず、小さく拳を握りしめて矢継ぎ早に言葉を発した。
「――――一分一秒でも長くお前が生きていることが重要なんだよ……!」
「――――あなた方と離れたら私は――――……例え心臓が動いて、生きていたとしても……心から笑える事なんて、ないです。きっと。」
「――――………。」
「それはとても……つらい、です。」
リヴァイさんはほんの少し目を見開いて、やるせないという表情を見せて――――また拳を強く、握った。
「泣きながら永らえる1年なら、共に生きて笑って死ねる1ヶ月を選びたい。お願いします、リヴァイ兵士長。我儘を――――許してください。」