第13章 戦友
エルヴィン団長の号令の元、隊は壁外へと駆け出す。
壁外と言っても、この間まで人類が……私の両親が住んでいた場所だ。今まで何度も目の当たりにしていたはずのウォール・マリアの町々は廃墟と化し、人々が巨人から逃げ惑ったのであろう痕跡がまざまざと残されていた。
その光景を見ただけで、私は背筋が凍る思いだった。
門から駆け出して約1時間後、左手前方の索敵部隊から、赤い信煙弾が放たれた。
ついに、来たんだ。
誰かが、巨人と戦っている。
そう考えただけで、身体が震えた。
――――――待って。左手前方?そこは―――――――――
「リンファさん………!」
すぐに班長が続けて信煙弾を打ち、中央のエルヴィン団長にその位置を伝える。
しばらくすると、隊の中央から緑の信煙弾が右の方向に向かって放たれた。
エルヴィン団長が、隊の進行方向を変えたのだ。
私たちはそれに従って進んだ。
リンファさんが戦っている。
巨人と。
命を賭けて。
「大丈夫、大丈夫……!リンファさんは強い。きっと大丈夫……!」
私は自分に言い聞かせ、ひたすらに馬を駆った。
その時、身体の奥から響くような、嫌な重低音が等間隔で聞こえてきた。それが、徐々に近づいているのがわかる。
巨人の――――――足音だ。
「ロキ班長!!!!!左手から、巨人です!」
「10メートル級か……!アルル、信煙弾を打て!オリバー、エルド、ニナ!!戦闘態勢!!!」
「はいっ!!!!」
ロキ班長は指示を出したかと思うと、戦闘態勢に入った。続いて先輩兵士の面々も戦闘態勢に入る。
私は震える手で弾を詰め、信煙弾を放った。