第143章 我儘
エレンの“叫び”の能力は王家の血筋の者が取り込まなければ力を発揮しない、だから元王政はエレンとヒストリアを手に入れることに血眼になっていたこと。
そして“叫び”の能力は、人類の記憶を改竄する力まで持つということ。
特殊な巨人の能力は、その脊椎を体内に取り込むことで引き継がれるということ。ロッド・レイスの用意していた“ヨロイ”と書かれた薬を摂取したことで、エレンが硬質化の能力を手に入れたこと。
その他にも――――、中央第一憲兵の隊長……あの夜会の日や、アーチさんと廃墟の教会で対峙したあの人が――――……リヴァイ兵士長の叔父にあたる、アッカーマン家の人物であり、どうやらアッカーマンの血筋は類まれな戦闘能力を持っているということや……礼拝堂でサッシュさんがアーチさんを説得し、連れ戻して現在療養していることなど、様々な情報が共有された。
「――――あと、もう一つある。」
ふいにリヴァイ兵士長が、黒い小箱をテーブルにかた、と置いた。
「……リヴァイ、これは?」
「………ロッド・レイスが持っていた――――、人間を巨人化させる薬だ。」
「!!」
「まさか……!」
ハンジさんと私は目を合わせた。
「――――……本当に……そんなものが、存在するんだね……。」
「成分の分析などを試みますか……?もしかしたら……なにか、手がかりが……。」
「―――そうだな、まずは調べられないか、兵団内の研究施設に送ってみよう。リヴァイ、これはどこから……?」
「………ケニー・アッカーマンがロッド・レイスから奪ったものらしい。死ぬ間際に俺に託した。」
「――――……。」
ああ、そうか。
――――あなたが失ったのは……この世で唯一の血の繋がった人だったのか。
リヴァイ兵士長の伏せられた睫毛を見ると、心がきゅっと苦しくなる。