第143章 我儘
「――――驚いた。戻ったのか?」
「はい。」
「――――体は……?」
「………事情は、後程。」
「………そうか………。」
体はどうだ、という問に対して『良くなったから戻って来た』と即答しないことに、エルヴィン団長は察したのだろう、ひどく昏い表情で、その蒼が陰ってしまった。
聡く洞察力のある人は、こういう時――――わかりたくないことまでわかってしまって、辛いだろうと思う。
心配しすぎないで、と想いを込めて、愛しい人の目を見て柔く微笑む。すると、少し困ったような笑みを――――エルヴィン団長もまた返してくれた。
兵舎の一室を間借りして調査兵団の執務室とさせてもらっているらしい。
そこまで広くもない部屋だけど――――、十分だった。
もう、あの頃のようにたくさんの兵士を抱えてはいない。多くが亡くなって――――、もう今調査兵団の兵士は、数えるほどだ。帰って来て、久しぶりの幹部が揃った。
幹部と言っても……ミケさんはいない。
エルヴィン団長とリヴァイ兵士長、ハンジ分隊長と私だけの、小さな会議だ。
「――――みんな、本当に良くやってくれた。」
エルヴィン団長から労いの言葉がかけられたけれど、手放しで喜べないのは……失ったものが大きすぎるからだろう。そして――――得た真実もまた、残酷でしかないものだった。
「――――何から話せばいいのか、だが……とにかく情報の整理だな。」