第142章 初口
それから兵団本部にいる色んな仲間と話して歩いていると、礼拝堂付近の捜索に出ていた複数の班が戻って来た、と聞いた。
どくん、と心臓が音を立てながら鼓動が早くなっていく。
――――リヴァイ兵士長が、帰って来た。
会える。
やっと。
そして私は―――――謝らなければいけない。
気付けば、彼らを迎えに走り出していた。
馬を繋いで装備を外して点検の上で片付ける。任務から戻ってからやる事はたくさんあって、部屋にリヴァイ兵士長が戻るまで待ちきれなかった私は窓から見下ろした厩舎にその姿を見つけて、駆けつけた。
――――走ると息が上がるのが、早い。
血液が正常じゃないから……酸素を上手く運べないのだろう。疲れやすいのも最近の自分の体の変化だ。
はぁはぁと息を切らしてその場に向かうと、リヴァイ兵士長は馬から鞍を外しながら、どこか心ここにあらずといった様子で愛馬をそっと撫でていた。
たった数週間ぶりなのに―――――、何年も離れていたような、なんとも言い難い感情が次々に押し寄せる。
何も言えなくて、ハンジさんやエレンにしたみたいに能天気に飛びつくなんてとてもできなくて、………少し、怖くて………、話しかけられないまま、やっぱり引き返してしまおうかと一歩、後ずさった。
じゃり、と砂を鳴らした靴音にリヴァイ兵士長が顔をこちらに向けた。
「――――ナナ………?」
珍しく、眉を下げて驚いている。
いつもは……目を見開きつつもたいてい眉間に皺が寄っていたり、片眉がつり上がって不機嫌な様子なのに。
「おかえりなさい……、リヴァイ兵士長………。」
「お前なんでここにいる………?」
驚いて下げられていた眉は、またすぐに不機嫌に、いつも通りしかめられた。
身体の事を心配して遠ざけた。前線から外したのに、なぜ戻ってきている?と――――、怒ってる。