第142章 初口
ナイル師団長に教えてもらったとおり3階の部屋を覗き込むと、そこに会いたくて仕方なかった人を見つけた。
私は彼女の名前を呼ぶよりも先に、体が動いて――――駆け出していた。近づいてくる足音に気付いたのか、私が飛びつく直前に、窓の外を眺めていたハンジさんが振り返った。
「?!えっ、ちょっ、なに?!――――ナナ?!?!」
「ナナです!!!」
力の限り抱きついてむぎゅ――――っとすり寄って甘えると、ハンジさんもまた強く強く抱きしめ返してくれる。
「帰ったの?!え、体は?!もういいの?!」
「あ、良くはないです。」
「えっ?!良くはないの?!」
「はい。」
ハンジさんがずっとハイテンションで私の目を食い入るように見て話してくれるから、思わず嬉しくてくすぐったくて笑ってしまう。
私がくすくすと笑うと、ハンジさんの表情がとても優しく柔らかく変化していく。
「――――そっか、でも……心のほうは随分良さそうで安心した。」
「はい!ハンジさんのお顔を見たら、もっと元気になりました。」
ずっと会いたかったハンジさんに素直な気持ちを伝えると、ハンジさんはまたもやむぎゅっと私を抱き締め、落ち着かないように横に身体を揺らしながら興奮気味に言った。
「――――いややっぱナナなら抱けるな。」
「えっ。」
その言葉の意味を聞き返そうとした時、コンコンと誰かが扉を鳴らしてから、それを開いた。
「ハンジさん、失礼しま……えっ?!ナナ?!」
そこにいたのは、エレンだ。
「エレン!!!」
思わず私はエレンに駆け寄ってぎゅっと彼を抱き締めた。………もう私よりも背が高いから、抱き締めたというより抱きついた形になってしまったけど。