第141章 覚悟
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検査後に入院して夜を明かした翌日。
晴れ渡る空から贈られた祝福の紙吹雪のように―――――、街中にビラが舞った。
お母様が持って来てくれたそのビラを食い入るように見つめると、涙が込み上げる。
「――――ヒストリア……!」
ビラには、“身を潜めていた真の王家であるレイス家の当主が暴走、巨人化してオルブド区を襲撃。身を呈して住民を守ったのは調査兵団と―――、ロッド・レイスの息女、ヒストリア・レイス時期女王が自らの手で暴走した父を鎮められた。”
やったんだ、みんな。
お疲れさま、本当に。
私はそのビラをギュッと握り締めて、涙を堪えた。
「――――ナナ、行くのか?」
そんな私を見て、朝の往診に来ていたボルツマンさんが、ぽつりと言葉を零した。
「……はい、行きます。色々とこれからもお世話になりますが、どうか――――。」
「堅苦しい挨拶は不要だ。」
「……止めないでいてくれて、ありがとうございます。」
私が申し訳ない、と眉を下げて微笑むと、ボルツマンさんははぁ、とため息をついた。
「止めるだけ無駄だろう。お前のその――――母親譲りの信念に正直に生きるところは――――、危くも、魅力的だ。」
「………はい………!」
「――――今は進行も落ち着いているが、念のため一時しのぎくらいにはなりうる薬は出しておいた。持っていろ。――――何かあったら、すぐに来い。分かったな。」
「わかりました。」
「……………。」
「………あの。」
「なんだ。」
「………頭を撫でて、『行って来い、頑張れ』って……言ってみてもらってもいいですか?」
「は?」
眉をしかめて、ボルツマンさんは最高に怪訝な顔をした。