第140章 兄弟
「掴まれ。立体機動外してるから丁度いい。軽いな、お前。」
まるでガキの頃のように俺を抱えて―――――、兄ちゃんは飛んだ。
その時、カーフェンさんが遠くで――――……今まで見たことがないほど、安堵した優しい……美しい笑みを見せた。
「――――カーフェンさん……。」
俺のことがずっと気がかりだったのか。
俺が兄ちゃんに身体を預けた様子を見て、安心したとばかりに隊長を助けようと洞窟の奥へと飛び立った。そして次の瞬間、本格的に天井が崩落し始めて――――……、轟音と落石に飲まれるように、カーフェンさんも他の仲間も、押し潰されて―――――そこには、粉塵だけが舞っていた。
「――――っ……カーフェン、さ……っ……!」
切れ切れに発した言葉を兄ちゃんは聞き届けたのか、俺を抱える腕に、ぎゅっと力が込められた。
「――――世話んなったのか?あの人に。」
「うん………。」
兄ちゃんは瓦礫が次々と積み重なり、すぐに見えなくなった彼女の亡骸に向かって―――――感謝の言葉を口にした。
「―――――大事な弟が世話になりました。………ありがとう。」
俺はきっとおかしいんだ。
涙腺がイカれて、情緒もぐちゃぐちゃで………出血によるものか、意識がぼんやりと混濁していく中で………
恥ずかしいほど兄ちゃんにしがみついて、泣いた。