第140章 兄弟
「ははっ、お前………リンファと似てんな。」
「……は………?!」
何を今笑うところかよ、と苛立ちを含めて兄貴を睨む。
いつも馬鹿ばっか言ってる兄貴が……その時、俺の目を真っすぐ見て、これ以上ない誠意で俺に言葉をかけた。
――――同じ色の瞳が、俺を――――肯定してくれる。
「――――お前は汚くない。精一杯抗って生きてきたろ。凄い奴だお前は。」
「……うるさい、もう遅い。もう赦されないほど殺した。」
「ああ?」
「……やっと死ねる。償う気なんてさらさらないけど……、ただ、赦されないのは分かってるから――――終わりにするんだ。」
そうだ俺は――――奪って来た命に償う気すらない。
自己満足で終わらせようとする、そんなクズだ。
「お前は小難しいことを言うよな。」
「…………。」
「――――お前が何人殺したとか、俺には関係ねぇ。俺が赦す。」
兄貴は、ただ真っすぐに、能天気に言ってのけた。
「――――最初からそんな世界だ。誰もが綺麗に生きてるわけじゃない。みんな間違うし、殺し合うこともある。だから――――お前が足掻いて、苦しみながらも奪った命は………俺が償ってやる。お前が殺したことも世界が変わる糧になったと、証明してやる。」
なぜかな………泣くことなんてもう、無いと思ってた。
まして―――――自分のことで涙なんて、流れないと思っていた。でも、俺の目に映る目の前の兄貴が滲んで、ぼやけていく。
そうか、そうだ………
昔からそうだったじゃないか。
兄ちゃんは俺を見捨てない。
前を走って見えなくなっては――――
戻って来て、俺の手を引いていく。
俺がどこにいても。
何度間違っても。
――――兄ちゃんの側で、まだ……生きても、いいのか………?
「―――――……兄、ちゃ………。」
「――――やっと“兄ちゃん”って呼んだな?その方がお前らしい。」
兄ちゃんはふっと笑って、俺を片腕で――――、抱き寄せた。