第140章 兄弟
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――――エレンが叫んで走り出した後、エレンは巨人化した。そして――――崩落する天井にも耐えうるほどの強固な材質を身体に纏い、更には俺達を守るために何本も柱を生み出し、まるで建築物のような空間を創り上げた。
これは――――俺達が追い求めた、硬質化の能力だ。
エレンを硬質化した巨人体から引きはがしても、その柱も硬質化した巨人体も消失することはなかった。
……すべての壁は、この原理で出来ていたと思って間違いないだろう。奇しくもこんな形でエレンは硬質化の能力を手に入れた。――――つまり、ウォール・マリアの穴を塞ぐことが可能になったというわけだ。
中で刃を交えていた中央憲兵は―――――ほぼ巻き込まれて死んだだろう。しばらくして俺達は無事に洞窟から出た。アルミンの姿もある。ハンジも。
そして―――――
「………リヴァイ、兵士長……!」
「――――サッシュ。」
「………ご心配をおかけしました。」
「――――弟は。」
「………無事です。」
「――――そうか。」
あの時―――――、ロッド・レイスが巨人化する直前にサッシュは俺に言った。
『――――すみません兵長………。もしかしたら俺は――――命令に背く行動をするかも、しれません……。』
『あ?』
『――――弟を諦められない。もう一度、説得しに行きたいんです。』
『私情か。』
『………すみません。』
『………何が正しいかなんてわからねぇ。俺の命令通りに動くのも、背くのもお前の選択だ。お前が後悔しないように動け。』
『――――はいっ……!』
サッシュが横たえて止血を試みている弟に目をやる。
どうやら意識を失ってるらしい。その顔は――――まだエレンたちと変わらねぇガキに見える。
――――何も知らねぇガキを引き込んで、拷問や暗殺を教え込む中央憲兵には反吐が出るが――――……おそらくもう、中央憲兵という組織は壊滅する。
「――――サッシュ。傷が癒えれば弟にも働いてもらうぞ。」
「………っはい!!!」
サッシュは心底嬉しそうな顔をして、弟の手を握った。
――――お前がまた大事な人間を失わなくて良かったと――――……
わざわざ言うこともねぇか。