第140章 兄弟
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目の前で閃光が轟いた。
ヒストリアが破壊した注射器の中身をロッド・レイスが体内に入れたのか―――――、奴が巨人化したんだ。
洞窟自体が破壊されそうなほどの爆風が起こり、目の前でなにも無かった空間に脊椎、骨、筋肉が生み出されて巨人の形をかたどっていく。ヒストリアは未だ諦めず、あらゆる鍵を試して俺の拘束を解こうとしている。
「――――レイス家が巨人になったなら、俺がこのまま食われちまえばいい!!もういいヒストリア!!逃げろ!!」
「嫌だ!!!」
「だからなんでだよ!!」
「――――私は人類の敵だけど……エレンの味方。」
その言葉に、一瞬、思考が停止した。
「いい子にもなれないし、神様にもなりたくない。でも……自分なんかいらないなんて言って泣いている人がいたら……そんなことないよって、伝えに行きたい。」
――――初めて目にした、ヒストリアの“自分の意志”。
「それが誰だって!どこにいたって!!私が必ず助けに行く!!」
それは俺が今まで見て来た“良い人”、“いい子” のクリスタとはかけ離れた――――、ただ自分の思いに正直に生きる、逞しいヒストリアの本当の姿だ。
その時、周りに調査兵団の面々が現れた。また、来てくれた。俺を――――救うために。
「兵長!!みんな!!」
「――――まずいな、天井が崩落する。」
皆が必死に両手両足の枷を外して、間一髪崩落してきた巨大な岩に押し潰されることなく、その場を脱した。
―――――ただし、俺達にどうやら逃げ場はなさそうだ。目の前には超大型巨人よりも巨大なロッド・レイスの巨人……そして、崩落間近なこの洞窟。
巨人化してみんなを守ったところで―――――硬質化できない俺は、地面がまるごと崩落してきたらひとたまりもない。