第140章 兄弟
立体機動で前線の兵長にまで追いついた。
兵長は周りから一切視線を外すことなく、俺に現状を伝えてくれる。
「―――――半数程度は殺った。だがケニーがまだ姿を見せてねぇ。あと警戒すべきはお前の弟だ。殺ったのか?」
「――――いえ、ただ負傷してます。満足に戦える状態じゃない。」
「――――そうか、よくやった。」
「―――――………。」
昔は分からなかった。
この人の分かりにくい優しさが。
今兵長が言った『よくやった』は、おそらく………負傷させて戦力を削いだことだけじゃない。
“弟を殺さずに、無力化した”ことに対して――――、俺の心的負担まで考えてのことだ。
ああ、やっぱり俺は―――――この人に敵わない。
この人に一生、ついて行きたいと思う。
―――――なぁナナ。
お前の惚れた男は、凄い人だ。
「――――すみません兵長………。もしかしたら俺は―――――。」
「――――あ?」
兵長に言葉を投げかけたその瞬間、洞窟の奥の方で凄まじい閃光が放たれた。
――――――誰かが、巨人化したんだ。