第140章 兄弟
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耳から次々零れ落ちる血が、うっとおしい。
だがそんなことに構ってる暇はない。
兵長たちを追って行く。
すると――――、俺のすぐ近くで、ドゴッと大きな音がした。何かがぶつかった音だ。
目を凝らすと、柱に叩き付けられたのだろう、ハンジさんがゆらりとそのまま落下していく姿が目に飛び込んで来た。
「――――ハンジさん!!!」
なんとか軌道を変えて、ハンジさんを間一髪、地面に叩き付けられる直前で受け止めた。この人もまた失ってはいけない、人類にとって大事な矛になる人だ。
「総員後退!!この煙から離れろ!!守りを立て直す!!」
まずいな、敵が後退する。
また備えられたら今度はこっちが不利になる。今すぐ追って、叩けるだけ叩かねぇと。そんな戦況を見つつ、抱き留めたハンジさんに目を落とす。
「………良かった……けど、意識はないな……。」
戦線離脱させるしかない。
だが俺はまだ戦える。
誰かハンジさんを任せられる奴――――、そう思って辺りを見回すと、ちょうど援護の煙幕を放つ要員として間隔を開けて追って来ていたアルミンが姿を現した。
「アルミン!!ハンジさんを頼む。」
「は、はいっ!」
「――――サッシュ!!お前まだ行けるな?!」
最前線を飛ぶ兵長が、俺を呼ぶ。
「はい!!」
「――――来い!!残り全員で敵を追う!!!」
この奥で何が待ち受けるのか。
――――行ってみなきゃ、わかんねぇよな。