第140章 兄弟
「―――人類が1人以下にまで減れば、人同士の争いは不可能になります。」
ピクシス司令の背中に投げかける。
それはただの屁理屈、ではなく……ピクシス司令の儚い夢を、静かに否定した言葉だ。ピクシス司令はそれを察して、小さく悲しい笑いを零した。
「ははは……。そんな屁理屈が聞きたかったわけではないわい。」
――――そう、人は争うことをやめない。
なら、俺は欲望に忠実に――――、何を失おうとも、誰と争おうとも、――――敬愛する歴戦の兵士に軽蔑されようとも。
欲しいものを勝ち取る。
ナナを。
夢を。
その為に、ウォール・マリアをこの手に、取り戻す。
自由を象徴する翼が配されたマントを身に着け、兵士を指揮する声をあげた。
「――――総員整列!!!これよりエレン及びヒストリア奪還作戦を開始する!!目標と思われるレイス卿領地礼拝堂を目指す!!!」