第12章 壁外調査
口から吐く冷たい言葉とは裏腹に、俺はナナの頬に指を添えた。
ナナに触れるのは久しぶりだ。
触れた途端、ナナの不機嫌にひそめられた眉は途端にハの字に下がり、わずかに熱を帯びた大きな眼で俺を見上げる。
「………リヴァイさんを、兵士ではない…ただのナナが、待っています。」
ナナは恥ずかしそうに眼を逸らした。
「………いい子で待ってろ。」
頬に添えた指をナナの頭に乗せ、子猫のような柔らかで細い髪をクシャッと撫でる。
「………また子供扱い………。」
「………子供だろうが。」
ナナが再び少し不機嫌な表情を見せる。
俺が子供だ、ガキだと口にするのは、そう思い込んでこの欲望を自制するためだ。もうとっくに、俺には女にしか見えてねぇ。
……それに気付かない鈍感さは、本当にガキだと思うが。
「私もひとつ聞きたいです。」
「なんだ。」
「リヴァイさんにとって、私は…………なんですか………?」
ナナは寒さのためか、涙を堪えているのか、鼻の頭を赤くして俺に問う。
「小さい頃から面倒を見ている子供、ですか……?世話の焼ける部下、ですか……?それ、とも………。」
俺はすぐに答える事ができなかった。
当たり前だ。
一言で言い表せる感情と関係なら、こんなに回りくどく悩んだりしてねぇ。
「…………帰って来たら、教えてやる。」
ナナの頭を少し抱き寄せ、耳元で囁いた。