第12章 壁外調査
それから慌ただしい時間が流れ、出立の日はやってきた。
ナナから預かったクラバットを身に着け、エルヴィンと共に最後の編成確認をする。
門の側で、ナナの姿を見つけた。
そこに、駆け寄っていく男の姿。サッシュだ。
性懲りもなく、ナナに言いよっている。が、無理もない。死ぬかもしれねぇ時に、好きな女の姿を目に焼き付けたおきたい気持ちはわかる。
サッシュの勢いに押されているのか、ナナは困ったように眉を下げていた。
「………おいリヴァイ。」
「なんだ。」
「そろそろだ。問題はないか?」
「………ああ、問題ない。」
俺の返答を受け、エルヴィンは馬に跨った。
それに続いて俺も騎乗する。
ふと振り返ると、ナナと目があった。今にも泣き出しそうな顔で、俺を見つめている。
ほんの数秒視線が絡んだが、続けて騎乗する兵士たちの陰に隠れて、ナナの顔はすぐに見えなくなった。
俺は前に向き直り、首元のクラバットを口によせ、「生きて帰る」と強く想いを込めて、ナナにするように口づけをした。
俺がこんなまじないのような事をする日が来るとは、自分でも想像していなかった。
「開門!」
エルヴィンの号令と共に、重厚なウォール・ローゼの門がゆっくりと開く。
「ウォール・マリアを取り戻す、来たる日の為に!!!!奪われたウォール・マリアの調査を開始する!!全員、進めーーーーーーーっっっ!!!!!!」
砂埃を立てながら、全隊が壁外へと駆け出していく。
俺はいつものように、一度空を見上げて深く息を吸い込み、腹を据えた。