第139章 苦闘
「なんで……エレン、なんで巨人化しないの?私が巨人になれば……食べられるんだよ……そのままだと……。」
――――なにをどう、詫びればいい?
俺のせいで何人、いや何十、何百、何千……どれだけの人が死んだ?俺にこれ以上戦って生き延びる権利なんか、ないだろ。
「――――……いらなかったんだよ……。俺も、俺の親父も……。」
「え……?」
「親父が5年前ここでこんなことをしなければ……俺と親父が巨人の力をあるべき所から盗んだせいで……一体どれだけ人が死んだ……?」
アルミンのじいちゃん、トーマス、ミーナ、ナック、ミリウス、マルコ、リヴァイ班のみんな……ストヘス区の住人……俺を助けようとした兵士……ハンネスさん……
「俺は、とても……償い切れない。いらなかったんだ。あの訓練の日々も……壁の外への、夢も。」
――――アルミンの本を見ながら、アルミンと目を輝かせたあの日々も。
家の屋根に上って、ナナと2人壁を超えて行く鳥を眺めて――――いつかその先へと、ナナに海を見せてやるんだと――――……誓ったあの時間も。
全て。
俺が見ていい夢じゃなかった。
「――――俺は、いらなかったんだ。」
ごめんみんな。
死なせるだけ死なせて、逃げるようで悪いと思う。
………でも、でもどうやったって償う方法がわからない。
皆の仇を、と――――、想い続けて来た俺自身が、最初から―――――いなければ良かったんだ。
「だからせめて……お前の手で終わらせてくれ。ヒストリア……俺を食って、人類を救ってくれ。―――――あとは……任せた。」
ミカサ、アルミン、ナナ。
みんな。ごめん。
今も俺を助けようとして傷を負ってるんだろう?
でももうこれ以上死なせないから。
俺がいなくなればいい。
あるべき所へその力を還す、それが人類にとって最善だと思う。
―――――ヒストリアは、小さく俯いて――――、自分の腕に、決意と共に注射器の針を、刺した。