第139章 苦闘
「フリーダが巨人の力を使えば、何の問題も無かったのだ。この世の巨人を駆逐することもできたであろうな。」
「……そんなことが……できるなら、なぜ今こんなことに?!」
「フリーダから奪われた巨人の力が、エレンの中にあるからだ。この力はレイス王家の血を引く者でないと真の力が発揮されない。彼がその器であり続ける限り、この地獄は続くのだ。」
―――――恐ろしい現実を知った。
俺。
俺が……この人が死に続ける世界を、地獄を終わらせられない元凶………。唐突に降って来たおぞましい事実に、体中の血液が冷え切るような感覚を感じた。
だがそれは、俺だけではなかったらしい。
いつの間にかそこにいた、おかしな立体機動装置を身に着けた、中央第一憲兵のケニー・アッカーマン隊長と呼ばれた男もまた俺と同じような絶望の表情で言葉を発した。
「おいおいおい……それじゃあ、レイス家がエレンを食わなきゃ……真の王にはなれねぇのかよ?」
「……そうだが?」
「じゃあ……俺が巨人になってエレンを食っても意味無いのかよ……。」
ケニーは何かに逆上し、ロッド・レイスを掴みあげた。
それを制止しようとするヒストリアに―――――あいつが聞きたくもないであろう現実を突きつけた。そう……俺にだってわかる。ケニーの言う通りだ。
ロッド・レイスは間違いなく……娘を愛しているわけじゃない。巨人の器としてのヒストリアに用があるだけなんだ。
わかりたくもなかったであろうその現実を理解し、ヒストリアは――――泣いた。
自分の野望にでも差し支えたのか――――、ケニーは、ロッド・レイスを解放すると、俺の方へと近づき口枷を取った。
「なぁエレン、ヒストリア。お互い巨人になって殺し合えよ。そしてヒストリアが勝てば平和が訪れる。エレンに負ければ、状況は変わらねぇ。舌噛み切るのも難儀だろエレン?切り込み入れといてやるよ。」
俺の額が割れる感触と、生ぬるい血が流れ出る感触。
だが、どうだっていい。
ヒストリアは自分の腕に注射を打つ腕が震えている。