第139章 苦闘
猛スピードで巻き取って移動していた故に、アンカーを外しても一瞬はその慣性でそのまま身体は移動する。
ぎゅる、と身体を捩じってアーチは俺の方に向き直して、銃口の照準を定めた。
俺も天井を蹴った勢いでの移動だ。
アンカーはすでに回収している。
軌道は変えられない。
俺に向いた銃口が小さく爆ぜて―――――、鉛が二発、俺目がけて飛んだ。
その一瞬は、見える。
まるで鉛の回転まで見える気がする。その鉛とすれ違うように、俺の射出したアンカーがアーチの腿に刺さった。
「―――ッぐ、………っ!!」
俺の耳を鉛が掠って――――、戦闘で興奮状態だからか、耳から血が噴き出したような気がした。
だがそんなことより痛いのは――――、リンファに“助けてやって”といわれた弟に、怪我をさせてしまうことに対しての罪悪感が募る。
けど。
身体の傷は治る。
だから――――、なんとしても、俺はこの中央憲兵からアーチを連れ戻さなきゃならない。