第139章 苦闘
「いや。放り出せばまた――――無意味な人生を消費するだけの毎日に戻ってしまう。」
カーフェンさんは、強く美しい女だと思う。
彼女がケニーに悪態をつきながらも信じ、付き従うのは何がそうさせるのか。
ここ最近はこの対人制圧部隊に完全に引き抜かれて、俺はずっとカーフェンさんの元で色々と学んできた。
そしてようやく、少し分かった気がする。
きっと彼女の中に元々あったこの世界への絶望を、あの自分の欲望に忠実にその力を使うイカれた男にぶっ壊して欲しいんだ。
「……なんだかんだ、カーフェンさんは隊長のことを信じてるんですよね。」
「……そんな綺麗なもんじゃない。無意味な世界と無意味な人生に意味を見出すため……自分のためだ。自分の生きた意味を見出すため……。ここで敵を足止めして時間を稼げば、全てが報われる。」
「隊長の“世界征服”って野望ですか?壮大すぎますね。」
「そうだ。この世界を盤上ごとひっくり返すっていう―――――、ケニーの夢を、信じてみようじゃないか。」
「――――……世界がひっくり返るなら、俺はそれを見届けて死にたい。」
口をついて出た俺の言葉に、カーフェンさんは驚いた顔をした後、俺の頭をくしゃ、と撫でて少し悲しそうな顔をした。
ああ、この顔は見たことがある。
――――リンファが俺に向けたのと、同じ顔だ。
その瞬間、バンッ、と礼拝堂から地下空間に続く扉が蹴破られた音がした。
――――ついに始まったんだ、俺と兄貴の――――
本物の、殺し合いが。