第138章 悪党
「――――君の身体は?ずっと、心配だった。体調はどうだ?」
「――――今、元気になった………。」
「ふふ、そんなはずないだろう。……俺達は無事だ。リヴァイも。おそらくハンジも。サッシュも。だからまた大人しく療養するんだぞ。」
「……やだ………。」
「――――なら例え死んでも、俺と来るか。」
「――――うん。」
半分冗談だったのであろうエルヴィンの言葉に即答した私の髪を撫でていた手が、少し躊躇った。
「……でも君に死なれたら困るな。一生安らかに睡眠がとれないじゃないか。」
「………困る理由はそこなの?」
「いや……―――言っただろう、本当はもっと深刻だ。――――君なしでは、俺は俺を生きられないんだ。」
私の言葉に、エルヴィンの手がまた頬を滑って――――私の視線を無理矢理捕らえた。
距離が縮んで――――その唇が重なる。
拘束されて尋問でもされていたのだろう、唇は割れて乾燥している。
私の唾液で潤すように、食んで、舐めて、絡めて―――――まるで心と身体を繋げるように、空いていた時間を埋めるように、ただ一度の、長いキスを交わす。
「…………ん…………、ぁ……………!」
「ん……駄目だぞナナ、………悩ましい声を出すな……抱きたくなる。」
「ぁ……っ、ん、だって…………っ……!」
「だって……?」
「――――ずっと――――、したかった……。」
「ああ……。俺もだ、ナナ。」
上がる息の合間にすかさず舌を絡めとられて、溶かされるようなキスを一身に受けて――――私は思った。
またこの腕の中に戻って来られて良かったと、心から。