第137章 革命
――――――――――――――――――
――――あちこちが痛む。
まだ右腕の幻肢痛も完全には無くなっていないというのに、厳しい仕打ちだ。
中央憲兵に拘束されてからは、罪人さながらに地下牢に繋がれ――――、自白を強要するための尋問が行われた。といっても、軽い……可愛いものだと思う。
なにより――――ナナに会えた。
あの一瞬の逢瀬があったからか、全く絶望というものが見えない。むしろ―――――、『さぁ、どうする?』と、彼らに問いたいくらいだ。
ふ、と小さな笑みともため息ともとれる息を漏らすと、地下牢へと降りて来る足音が聞こえた。
「――――エルヴィン……。」
ナイルは牢を開けてわざわざ俺の近くまで寄って、目を合わせるようにかがんだ。
「なんってザマだ……この間、俺に偉そうに説教たれといて……。」
ボロボロの俺を、死が目前に迫る憐れな同期を見ていられないとばかりに、時折目線を逸らす。
「王への謁見が決まったぞ。そこで調査兵団の解体とお前の処分が下される流れだ。」
「―――ナイルか……。」
「…………。」
「――――礼を言う。ありがとう。」
「は……?!」
その意味のわからない礼の真意を問おうとしたナイルは察したように、自分の背後……牢の外で警護をしている兵士を横目でちらりと見た。
――――ナナとたった一瞬でも会えた。
それが今俺の心の柱を支えている。
絶望的な状況であっても――――なぜか、大丈夫だろうと思える。
「……ピクシス司令に……あることを委ねた………。もし………その時が来ればだが――――、その時俺はただ見ている。選ぶのはお前だ。そして―――――彼らだ。」
ナイルは何を言っている?と、底の読めない言い知れぬ恐れでも抱いたような顔で俺を見て――――、一歩、後ずさって――――、その場を去った。