第12章 壁外調査
エルヴィン団長の部屋を出て、カップを片付けた私は、どうにも眠れる気がしなくて、いつかハンジさんと一緒に星を見上げた兵舎の屋上に上がった。
扉をあけ、済んだ星空を見上げる。
息が白い。もう、冬が近いのだ。
私はふと、エルヴィン団長の資料の中にあった、過去の壁外調査での兵士の生存帰還率を思い返した。
エルヴィン団長に変わってから直近二回の壁外調査での生存帰還率は大幅に上がっていたものの、それでも生存帰還率は70%に満たない。
約三分の一の兵士が、死に至る。
今一緒にごはんを食べて、生活している仲間の三人に一人が死ぬ。心臓が縮むような心地だった。
もしかしたら、リヴァイさんだって――――――――――
死、とはなんだろう。
医者という立場上、様々な死に立ち会ってきたが、それでもその意味を掴みきれずにいる。
二度と、会えなくなるってことだ。
二度と、名前を呼ばれることも、その目に私を映すことも、触れることもできなくなる。
もし、リヴァイさんがそうなったら?
怖い。
背筋が凍るようだった。
私は自分の震える両肩を押さえた。
その時、背後から私の肩にバサッと服がかけられた。
「こんな時間に、何やってる。」
不機嫌なその声は、私がまさに考えていたその人だった。