第12章 壁外調査
「ありがとう。でも……どんな誘い文句であれ、どんな相手であれ、ベッドに来るよう誘われているときは断らなくてはいけないよ。」
「………エルヴィン団長でも、ですか?」
エルヴィン団長の指が私の顎をすくい取る。
「………私が、無害な男とは限らないぞ?」
その仕草と、いつもの低く知的で落ち着きのある声にわずかに艶がかかり、私はゾクリとした。
昼間のリンファの言葉が頭をよぎる。エルヴィン団長ですら例外ではないのだろうか。そう思うと、急に恥ずかしくなる。耳まで顔が真っ赤になり、どうしようと、おろおろと目を泳がせた。
エルヴィン団長は、はははっと大きく笑うと私の顎から手を離した。
「はは、からかって悪かった。今日は、ここまでだ。下がってくれて良いよ。」
「は、はいっ………!失礼します……!」
私は急いで立ち上がり、カップを持って団長室を後にした。
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ナナが部屋から立ち去ってすぐ、先ほどの真っ赤になっておろおろしたナナの顔を思い出し、エルヴィンはくくっと笑った。
「参ったな………。柄にもなく、本当に欲しくなってしまうじゃないか。」