第137章 革命
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――――初めてまじまじとナナを見た。
ずっと遠目から追うだけだったからな。眼深く帽子をかぶり、薄汚れたガキみたいな服装をしてたってわかる。
……綺麗な女だ。
――――アリシアが嫉妬に狂ったのも――――……分かる気がする。リヴァイ兵長のことだけじゃなかったんだろう。なぁアリシア。その憎しみは裏返しだったんだろう?憧れていたんだろう、ナナに。
「――――……こんな事を思うと、あいつはまた機嫌を損ねるだろうな。」
ぽつりとつぶやく。わずかに身体を交えただけの女に――――、もうこの世にいない女に、俺は何を柄にもなく縛られているのか。
「――――さて、行くか。」
ナナから託されたどえらい情報を、誰に託すのがいいのか。それを考えた時、最も調査兵団が不利な立場にある場所でそれを覆すのが良いかと、そう思った。
あと………もしかしたら、調査兵団の他の兵員がまだいるかもしれねぇ。
「――――トロスト区か。」
俺は最速で馬を飛ばして、トロスト区へ向かった。
久々に見たそこは、かつての活気など嘘のように荒廃していた。そりゃそうか。この街の産業を盛りあげていたのはリーブス商会だ。その会長が――――殺されたんだからな。
巷では調査兵団の仕業とでっちあげられているが、俺には分かる。調査兵団に罪をなすりつけるために中央憲兵が、やったことだ。それをなんとか――――、俺も、調査兵団の無罪を証明してやりたい。何か、見た奴や証言出来る奴がいねぇのか―――――ついでにそれも聞き込むか。
そう思って廃墟のような場所に足を踏み入れた。そして――――謀らずもおもしれぇ場面に、遭遇した。俺はさっと身を隠して――――その一部始終を見ていた。