第136章 進達
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オーウェンズ病院を出て――――兵団本部に辿り着くまでの一本道で、ひたすらその人の到着を待つ。
――――必ず来る。ピクシス司令は、ここに。
私は考えた。
エルヴィン団長の今までの行動と、交友を鑑みると、革命とも言えるこの大きな出来事を起こすには――――同志を集めているはずだ。
これまでのエルヴィン団長のスケジュールも、ほとんど覚えてる。特に頻繁に会っていたのが、ピクシス司令だ。
兵団の中で最も多くの兵を抱える駐屯兵団の頭を引き込むことができないかと、彼ならまず考える。
――――それに、私から見てもピクシス司令は己の保身などを抜きに、心から人類を守り、永らえていくことを真剣に考えている方だ。
――――エルヴィン団長が信じ、情報を提供して共に企てるとするなら――――ピクシス司令以外にありえない。
エルヴィン団長に伝えられなくても、ピクシス司令にさえなんとか私の得た情報を伝えられれば―――――、何かの役に、立つかもしれない。
張り込みを始めて数時間後、ついに来た。
あれは―――――駐屯兵団の馬車だ。
どうやって止める?
ここも中央憲兵に見られていないとも限らない。
怪しまれないようにするには――――――。
私は意を決して、子供が不注意で飛び出したかのように、馬車の前に躍り出た。馬車の騎手が馬の手綱を瞬間的に強く引き、私の目の前で馬の蹄が空を切るように暴れる。
「――――!!」
ヒヒィィン、と大きな馬の鳴き声と共に、馬車がガタ、と止まって、私はその場に倒れ込んだ。
幸い馬には蹴られずに済んだ。