第136章 進達
「ッ!?!?」
銃声のすぐ後にドゴッ、と大きな音がした。
その身体ごと吹っ飛んだのか。当たったようだ。
―――とはいえまだ何人もこの酒場を囲ってる。
俺はそこに在った椅子を窓から放り出した。案の定そこに反応して敵が集まり、銃撃が行われる。その隙に反対から飛び出して、そこにいた見張りの一人の喉元にアンカーを刺す。
殺すと同時に、もっと役に立ってもらう。
アンカーを巻き取りその敵の身体を引き寄せ、肉の壁としてさらに先からの銃撃を防ぎながら距離を詰める。
――――銃創の弾を打ち尽くした2人の敵は、まるで化け物をみるような目を俺に向けた。
その刹那、2人の喉を裂いた。
――――続いて何人殺したか。
とにかくこの場を切り抜けるために、殺せる奴は殺す。
―――――懐かしい。
一緒じゃねえか、ここも。
血に塗れた地下街に俺はまた、戻ってきたのか?
待機させていた104期と合流する。初めて見る新種の立体機動装置と飛び道具に怯えてやがる。
「――――霊柩馬車はもう追うな。俺達の行動は筒抜けだ。一旦エレンとヒストリアを諦める。奴らは2人を餌に残存する調査兵をこの場で全員殺すつもりだ。きっとこの先も敵が待ち伏せしている。同じようにして他の3人は殺された。」
「エレンとヒストリアはどうするつもりですか?」
――――あくまでエレンのために動くミカサが、食ってかかる。
「他の手を探すしかねぇだろ。それも俺達がこの場を生き延びることができたらの話だ。敵を殺せる時は殺せ。わかったか?」
「――――了解。」
――――人間を殺せという指示に反応したのは、ミカサだけだった。だが――――咄嗟に人を殺める事を躊躇しなかったのはもう一人――――意外にも、アルミンだった。
アルミンの行動が俺達の命を永らえることに繋がったが、本人も―――――、その他の104期の面々も人を殺したことに対しての心の抉られ方はかなりのものだった。
なんとかしてその場を切り抜けて逃走、俺達は山に潜伏し、一先ず身を隠した。その夜、アルミンは敵の頭を吹っ飛ばした自分を責めて吐き続けていた。
―――――人を殺すこととは、本来こんなにも心を削がれることなのか。
――――俺にはもう、わからねぇ感覚だ。